ずさん過ぎるJリーグの“改革” 問われるリーグ運営の姿勢
2016/06/13
9月10日から11日にかけて、Jリーグが2015年シーズンから2ステージ制を復活させるということが決定されました。
J1は15年から前後期制へ ポストシーズンで年間王者決定 | スポニチアネックス
正直、どうしてこうなったのかと思います。先月にも「もはや不祥事? ファン不在、選手不在のJリーグ“大会方式戦略”とは」という記事で書きましたが、ファン不在で出した結論には首を傾げざるを得ない。
[緊急インタビュー]Jリーグ、2ステージ制導入の真意を問う 中西大介(Jリーグ競技・事業本部長インタビュー) | SOCCER KING
サッカーキングのインタビューにおいて、中西氏が答えているのは、これはJリーグがメディアに採り上げてもらうための戦略である、ということ。しかし、このインタビューでも反対の声を煙に巻いているのは見え見えで、おそらくJリーグとしての本心も隠されている。
ずさん過ぎるJリーグの姿勢 クラブに一体何が還元されるのか?
ホーム&アウェイの1シーズンで優勝を決める理想が共有されていて、危機感をファンのレベルまでこれから落とし込んでいかなければならない。そう語るのは中西氏ですが、では何故、最初からファンを巻き込んだ議論をしなかったのか。各クラブのサポーターや、監督・選手の現場レベルからも反対の声が多く上がってきているのは、そもそものJリーグの姿勢にずさんな一面があるからです。
メディアに採り上げてもらうための戦略なら、Jリーグはまず放映権の売り方を検討すべきです。有料衛星放送では全試合放送されるが、民法では極端に試合中継が少ない、という状態がメディア戦略として歪なのは明らか。あるいは、リーグ全体のスケジュールを見直し日曜日の試合を増やす、平日開催される節を減らす、といった調整が先ではないのか。
そして最もずさんなのは、この大会方式の議論において、「大会方式を変えることでどれだけ観客が増えるのか」という検証数値が全く明らかにされていないことです。ポストシーズンのプレーオフを行えば、それに対する放映権収入が増えるでしょうが、注目される試合が増えてどれだけ各クラブの観客動員に影響があるのか、というところはこれまで全く見えていない。
結局は、観客動員に関しては各クラブの経営努力に委ねられることになるのでしょう。大会方式が変わったとしても、それによって各クラブが新しい取り組みをできるようになるかと言えば、すぐにはそうならない。1シーズン制と2ステージ制ではチケットの売り方も変わってくるし、クラブにとってはシーズンチケットをどう売るかも大きな問題になってくる。
報道を読み解いていけば、プレーオフの導入で増えるJリーグの収入は約10億円。これはクラブには分配されず、Jリーグが新たなメディア戦略をとるための資金となる。観客動員が減ってきている状態に対してテコ入れを図るのに、その経営努力を最もするクラブに対しての還元が全くと言っていいほどない。大会方式変更の狙いは一体何なのかと、いささか疑問を持たざるを得ません。
Jリーグがなすべきこととは? 問われるリーグ運営の姿勢
ファンを引き付けるフットボール以外の魅力…ブンデスリーガ熱狂の理由とは | SOCCER KING
現在、世界のプロサッカーリーグで最も観客を集めているのはドイツ・ブンデスリーガで、1試合平均が約45,000人と言われています。Jリーグ創設時の制度はブンデスリーガを参考にしていますが、観客動員に関しても、ドイツを参考にすべき部分が大いにあると思います。
Jリーグがなすべきなのは、一時的な金銭やメディアの人気取りのためにクラブやファンを振り回すことではなく、クラブやファンに還元できるビジネスの筋道を立てることです。上記のサッカーキングの記事にあることが全てではなく、ドイツサッカー連盟やリーグ、クラブが手を取り合って、現在のブンデスリーガを作り上げるためにとてつもない努力をしてきた、というのは有名な話です。
Jリーグは自分たちの在り方を見つめ直さなければいけないし、クラブも振り回されてばかりではいけない。その状態が続けば、ファンが離れていくのも自明の理でしょう。20年を迎えて成熟を迎えるリーグにあって、これからどんなリーグを築き、歴史を積み重ねていくのか。今問われているのは、リーグを運営する姿勢なのでしょう。