サッカー

川澄選手が実現するデュアル・キャリア 様々な可能性を秘めた米移籍

2016/06/13

2月11日(火祝)のことですが、女子サッカー・なでしこリーグ、INAC神戸レオネッサ所属の川澄奈穂美選手がシアトル・レインFCへ期限付き移籍することが発表されました。

 

川澄奈穂美が初の海外移籍を決めた理由 日米デュアル・キャリアという新たな潮流 | スポーツナビ

 

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川澄選手の移籍を伝える、INAC神戸レオネッサの公式サイト

 

この記事の中で「その手もあるか」と思ったのが、同じシーズン中に日本とアメリカの2クラブでプレーするという“デュアル・キャリア”という選択でした。この記事や川澄選手のブログでは、選手としての成長を考えての決断であったことにフォーカスが当てられていますが、それ以外にも効用が見込める移籍なのではないかと思います。

 

キャリアの一つの選択肢として 世界的な選手を呼び込む可能性も

一つは、川澄選手自身がパイオニアとなり、女子サッカー選手のキャリア形成のモデルとなれること。川澄選手以外にも大野忍選手や近賀ゆかり選手がアーセナル・レディース(イングランド)への移籍を決めましたし、大儀見優季選手も長くドイツやイングランドで活躍するなど、サッカー界では男子のみならず女子においても、海外移籍というのが現実的な選択肢になってきています。

 

同一シーズンで2クラブ、しかも国をまたいで所属するというのはネガティブに捉えられる面もありそうですが、アメリカのシーズンを考えると日本のクラブに籍を置いたままにするというのは非常に現実的。世界最強のアメリカ代表に囲まれる環境でプレーした後、シーズン後半にはその経験を日本にフィードバックすることも可能なのです。

 

しかも、川澄選手だけでなく、同様に移籍する鮫島彩選手や、外国人選手までもが日米でのデュアル・キャリアを実現しようとしているとのことです。期間は短くともトップレベルの選手が所属することは、間違いなくリーグにとってもプラス。リーグ優勝などタイトル争いが白熱してくるタイミングで、世界的な選手たちが一堂に会することも有り得る。こうなるとメディアへの露出や認知度の向上にも効果が大きいと考えられる。

 

川澄選手の期限付き移籍をきっかけに、こうしたキャリアを歩む選手が増えてもおかしくはない。全員が海外に行けということではなく、選手のキャリアプランの一つとして選択肢が増える。すべてはこうしたパイオニアの存在から始まるのです。

 

選手を通して世界を意識できるフィルターが増える

また、もう一つ考えられるメリットとしては、女子サッカーにおける世界の中での日本、という立ち位置を常に認識できるようになります。川澄選手はブログの中で「海外へ行けば、日本にいる時より私の情報が入りにくくなると思います。」と語ってはいますが、選手の人気や、数年前よりも女子サッカーの認知が高くなっている状況を考えれば、川澄選手の発信も含めてアメリカの女子サッカーについても入ってくる情報が多くなってくるはずです。

 

そうなると、日本でプレーしている選手、あるいはこれからなでしこリーグ入りを目指すような高校生以下の年代の選手たちが、世界を意識しながらプレーできるようになる。日本と海外の違いは何か、今の自分の立ち位置はどこなのか。そうしたことを認識するための選手を通したフィルターが、これから増えていくことになります。

 

男子で言えば、1998年のフランス・ワールドカップに日本代表が出場するまでは、海外でプレーした日本人選手の事例はほぼ三浦知良選手だけでした。ですがそれ以降、中田英寿氏、名波浩氏をはじめとして次々とヨーロッパへ渡り、本田圭佑選手や香川真司選手、長友佑都選手のように世界でも有数のクラブでプレーする選手まで現れた。出場が夢だったワールドカップにおいても、優勝を目標として捉える選手も出てきている。

 

1993年や1997年の予選を観てきた者からすると隔世の感はありますが、これも日本男子サッカーが世界の中での立ち位置を認識し、一つひとつ成功を積み重ねてきた結果。女子では既に海外へ渡っている選手も多いですが、男子サッカーで起こったことが女子サッカーで起こらないとも限らない。川澄選手の移籍はそのきっかけになり得るんですよね。

 

選手としての成長を考えてのデュアル・キャリアの実現にまず唸らされましたが、選手にとっても、リーグにとっても様々な可能性を秘めた移籍劇だと思います。願わくは、ロンドン五輪以来なかなか話題を提供できていないなでしこリーグの起爆剤になって欲しいですね。

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