サッカー

いわきFCが示す地域に対する新しいクラブの在り方

2016/06/14

福島県いわき市に新たに、いわきFCというサッカークラブが誕生しました。スポーツアパレルの「アンダーアーマー」ブランドを展開する株式会社ドームが株式会社いわきスポーツクラブを設立し、クラブ運営にあたるというものです。

 

 

いわきスポーツクラブの社長には、湘南ベルマーレで強化担当を務めていた大倉智氏が就任。その前はスペインでスポーツマーケティングを学び、選手としてもJリーグを経験しているというのですから、Jリーグやプロサッカーに関する経験値というのは非常に高い方ですね。いわきFCは運営側が非常にプロフェッショナルなクラブということになるかと思います。

 

このいわきFCが掲げているビジョンがまた面白く、今までのJリーグの多くのクラブに対するある種の挑戦のようになっています。それはすなわち、Jリーグや日本スポーツの常識を変えるものであると感じています。

 

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いわきFCの公式サイト。いわきFCは「いわき市を東北一の都市にする」などのビジョンを掲げている。

 

地域を牽引し地域を成長させ、支えていく。いわきFCが示す新たなクラブの在り方

そのビジョンの中でも重要なのは、スポーツを通した価値創造をしていわき市を東北一の都市にするということ。「社会価値の創造」を企業理念とする株式会社ドームが設立したのですから、こうしたコンセプトを掲げるのも当然かもしれません。ただ、クラブが社会価値を創造して地域に貢献する、ということをここまで明確にできるクラブは今まであまりなかったのではないかと思います。同じように明言できているのは岡田武史氏をオーナーに擁する今治FCくらいでしょうか。

 

Jリーグもリーグ組織として成熟の段階に入ってきていると思いますが、この成熟期にあたってはそこに参加するクラブの在り方というのも考える必要がある。以前もJリーグクラブは「地域文化を発展させる存在」にならなければならない、と書きましたが、正にそれを実現しようとするクラブが出てきたということですね。

 

おそらくJリーグ初期から今までは、クラブとファンが関係を作って、そこに価値を感じた企業が金を出す、という構図が多かったように思います。そこにはいわきFCのように、自らが地域経済を牽引する存在となり、ホームタウンやクラブのビジネス規模を大きくしていくという発想はありませんでした。そしてこれはいわきFCのビジョンでも語られている通り、欧米では既にそうした街づくりがスタンダードになってきている。クラブと地域の関係における、新しい考え方になりますね。

 

以前の記事で書いた福島ユナイテッドや長野パルセイロ、今治FCに加えて、いわきFCが地域に対する新たなクラブの在り方を世に示そうとしている。これは今全国でJリーグを目指しているクラブのスタンダードな指針になると思いますし、これからは新たな地域密着の理念として、地域とともにプロスポーツクラブが成長していくという考え方が多くなってくるはずです。むしろ、地域の方からそうしたクラブの在り方を求められる時代になることもあるかもしれません。

 

クラブが地域のインフラのようになって地域経済を成長させ、支えていく。あるいはクラブが文化の担い手となって地域へ好影響を与える。Jリーグが誕生してから二十数年、時代とともにクラブの在る意義も変わってきていると思いますし、新しい在り方も求められているのでしょう。いわきFCが占めそうとしているのはその新しいモデルなのではないかと思います。

 

いわきFCが目指すところは、故郷にJリーグクラブを作りたいと考えている私にとっても大きく影響を受けそうなところです。個人的な想いも多分に含みますが、いわきFCの挑戦に注目していこうと思います。

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