スポーツの競合は音楽? IoTと体験の時代への適応が求められる
以前からこのブログでは「コネクテッドスタジアム」について書いてきていますが、今のスポーツ界ではテクノロジーを活用したり、あるいはそのテクノロジーで集積したデータを利用していくということが必須になってきていますね。
インターネットで急速に変化するスポーツの視聴環境
コネクテッドスタジアム(インターネットに接続したスタジアム)がアメリカやヨーロッパで当たり前になってきつつある状況ですが、少しずつ日本でもその芽が出始めています。Jリーグの大宮アルディージャがNACK5スタジアムに多数のWi-Fiを設置したり、プロ野球の楽天イーグルスがkoboスタジアム宮城で全面的にソリューションを導入したり、という具合です。
さらに、Bリーグはスポナビライブによって全試合生中継されていますし、Jリーグも来年からPerformグループの「DAZN(ダ・ゾーン)」による放映が始まります。先日のリオ五輪でもNHKや米NBCがオンラインでの中継を展開していました。いずれもスマートフォンを中心としたストリーミング中継であり、スポーツの視聴環境は急速にPCやスマートデバイスに移行しつつあります。
こうした状況を見ていると、あらゆるものがインターネットにつながる「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」の時代において、スポーツ界においても状況が変わりつつあるなあ、と感じます。これは日本のスポーツ界がきちんと対応していかないと非常にまずい。今は過渡期にしても、インターネットの進化のスピードを考えればこうした対応は近いうちに必須へと変わるのは間違いありません。
スポーツコンテンツの競合は音楽に映像 IoTと体験の時代を先導する存在になるべき
スポーツがITやインターネットを利用していくのは必然の流れですが、この流れでエンターテインメント化していくと、実は競合が増えていくということにつながります。音楽業界では最近、ストリーミングサービスの「Spotify」が日本でのサービスインを果たしましたが、映像に音楽に、インターネット上でエンタメコンテンツをユーザーが享受するというのが当たり前になってきている。スポーツもこの流れに乗っている訳ですから、一つのコンテンツとして比較される時期もいよいよ近くなってきているんですよね。
その音楽業界では、ストリーミングやダウンロード販売の普及のおかげで、CDやDVD・Blu-rayなどのパッケージが売上を落としている。そして入れ替わるように、“体験型”のライブ市場が大きく売上を伸ばしてきている。こうやって体験を求める動きというのは、当然スポーツ界にもやってくる訳です。スポーツコンテンツでも体験を提供できるかというのは、これから何よりも重要な要素へと変化していきます。
音楽、映画、あるいはスポーツというのは娯楽産業で、時間と金をユーザーに払ってもらうという意味では同質のものです。そしてエンターテインメント市場というのはシェアの奪い合いが世の常。IoTや体験重視の時代に適応して、さらに付加価値を提供していかないと、スポーツ界はエンタメ市場の中で選ばれないものになっていってしまうということです。
これからはJリーグ、プロ野球、Bリーグで客を奪い合うような状況も生まれるかもしれません。しかし、競合はスポーツ界の中だけにいる訳ではなく、音楽や映像が提供する体験というものと争っていかなくてはならない。IoTや体験重視の時代でスポーツ界が変わっていくのは喜ばしいことですが、エンタメとしてはより厳しい時代へと入っていくのも事実。
スポーツ界としては、きちんと対応するだけでなく時代を先導する存在になっていきたいところですね。