サッカー

Jリーグ改革の裏に残された問題とは

2016/06/13

前回の記事でも書いていますが、Jリーグの2ステージ制の是非について、様々なところで議論が展開されています。浦和レッズや川崎フロンターレのように、ファン・サポーター向けに経緯説明を行うクラブも出てきていますが、この議論はさらに続けていかなければならないと思います。

 

2015年からJ1・前期後期制とポストシーズン制導入の是非 | J SPORTS

 

J SPORTSに寄稿されている元川悦子氏のコラムでも書かれているのですが、この2ステージ制導入の決定で気になるのは、不透明な部分が非常に多いというところです。それはリーグとして10億円の増収を見込んでいるという経済性の面であったり、あるいは大会としての“ヤマ”が増えることにより、観客動員にもプラスになる部分がある、という面であったり。

 

謎に包まれていた2ステージ制復活の意図 成長シナリオを描くために必要な決断 | スポーツナビ

 

導入が2015年シーズンからであれば、なぜこれほど慌てて時代と逆行するような方式を採用しなければならなかったのか。宇都宮徹壱氏による中西大介競技・事業統括本部長のインタビューでは、「時代への逆行ではない」と語っていますが、これは明らかな時代への逆行です。競技としての分かりやすさが売りであるスポーツにおいて、なぜこんなにも分かりにくい、不透明でアンフェアな制度を導入しなければならないのか。

 

Jリーグ戦略会議と銘打って、Jリーグ、日本サッカー協会、一部のクラブだけで議論を進め、ファンには情報を与えてこなかった。Jリーグを取り巻く環境が厳しくなる一方であるのは理解しますが、こうした議論の進め方自体にも、疑問を抱かざるを得ません。自分たちを最も強く応援してくれているコアな層を大事にできず、一体どうして新規顧客を獲得できるのか。

 

自ら理念を曲げたJリーグ 解決すべき課題は先送りに

誤解なきよう記しておきますが、大会方式にこだわってJリーグの財政が先細って行くことは、私も望んではいません。それは多くのファンにとっても同じだと思いますし、クラブが潤い、リーグが潤い、クラブを支える地域が潤ってこそ、Jリーグだけでなくその他スポーツにも明るい未来があると考えるからです。ただ、Jリーグの今回のやり方は非常にまずかった。

 

まずは、地域密着の理念を掲げて発足した組織であるにもかかわらず、自らその信念を曲げていること。今回の場合で言えば、クラブのコアなファンというのは、地域密着の理念のもとに育ってきたファンであるはず。長年連れ添ってきたはずの彼らを無視するような形での独断専横は、ファンへの裏切りという言葉では済まされないものです。

 

次に、Jリーグは先に解決すべき多くの課題を先送りにしていること。私もこのブログで述べていますが、天皇杯を含めたスケジュールの問題、秋春制へのシーズン移行、土日の一方での集中開催、など。数年かけて話をしていながら、遅々として進まないという事情はあるにせよ、ファンの満足度を上げる、観客動員を増やす、という点での努力ならもっとできる部分が残されている。ばらまきにならない程度にチケット代を下げる、ということもできるはずなのです。

 

2ステージ制は2015年シーズンから5年を目処に、と伝えられている。その間に秋春制への移行が決まったら?

プレーオフ制が導入されればシーズンは長くなる。2月開幕にするのか? 天皇杯との兼ね合いは?

 

Jリーグの収入面や、それに紐付くJリーグの未来というのがJリーグ側の建前になっていますが、近年抱え続けてきた課題に先鞭をつけられなかったことで、上記のように、今後より大きな問題になっていく可能性さえ残してしまった。何よりも問題なのは、“スポーツとしてのサッカー”を大事にしてきた組織であるJリーグが、経営面を理由にその姿勢を曲げてしまったことです。

 

苛烈なアレルギー反応をファンに残している、Jリーグの2ステージ制復活と新プレーオフ制導入。今のところ、この制度に強くフォーカスが当てられてしまっていますが、その裏で残されたものを見逃してはいけません。この改革の意味とは何か。この改革の裏に隠れた問題とは何か。そこに気付き、目を配り続けなければならないのだと思います。ここがJリーグと日本サッカーの分水嶺なのかもしれません。

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