J3“U-22選抜”への違和感 若手のプレー機会はいかに増やすべきか
2016/06/13
先日1月29日、今年からスタートするJ3の概要発表がありましたが、それをテーマにした宇都宮徹壱氏の記事を紹介します。タイトルにもありますが、J3に参加するU-22選抜への違和感を表したコラムです。
「若手育成の場」として語られるJ3 “U−22選抜チームありき”への違和感 | スポーツナビ
1993年のスタート当初からJリーグは拡大傾向にあり、実際に競技人口も増えている。全国各地にJリーグ入りを目指しているクラブも多数あり、経済的にJリーグが苦しいタイミングということを除けばJ3が開幕するのも当然というところではあります。ですが、やはり、宇都宮氏が持つような違和感を覚えているファンやサポーターも多いのではないかと思います。
一体誰のためのリーグか 本来の道筋とは異なる物事の動き
Jリーグというよりは、日本サッカー協会の思惑も絡んでいるのはおそらく間違いないと見えます。というのも、U-20日本代表は3大会続けてU-20ワールドカップの出場を逃している。代表の強化を考えれば、国際経験を積むべき年代で主要大会の出場を逃しているというのはマイナスでしかありません。また、2020年の東京五輪開催が決まり、そこへ向けた強化の道筋を今から作っておく必然性もあり、若手の出場機会を創出する必要があると判断してのことでしょう。
とはいえ、そうした事情を鑑みても、宇都宮氏が指摘しているような「U-22選抜ありきのJ3」という違和感、もっと言えば疑念は晴れない訳です。一体誰のためのリーグなのか、ということは他の誰でもなくJリーグが考えなければいけないことなのです。選手としても、所属クラブに対する立場というものがあり、選手はまずクラブに対して自分の価値を提供しなければならない。
Jリーグができてからの日本サッカーというのは、Jリーグが全体の底上げを推し進めている一方で、コンテンツとして日本代表の人気に支えられてきたというところがあります。Jリーグのレベルアップが日本代表の強化につながる、というのが本来の道筋な訳ですが、今の日本サッカーは日本代表ありきで物事が動いてしまっていることが非常に多い。今回のU-22選抜も同じことだと思います。
若手がプレーできる下地を用意すべき 手法も一つだけではない
本来の道筋から考えて、リーグの底上げの一環として代表強化につながる形を考えなければいけない訳ですが、その方法としても様々に考えられます。例えば、メキシコリーグのようなやり方。メキシコリーグでは、各クラブが毎試合23歳以下の若手を複数人起用しなければならない、というルールがあるそうです。この手法のおかげもあって、一人を除いて国内選手で構成した2012年ロンドン五輪で金メダルを獲得したのは記憶に新しいところです。
あるいは、JリーグクラブがU-20の組織を持つというやり方。現在のJリーグクラブでは、育成年代では18歳以下までしかチームを持っていない。ヨーロッパへ行くと20歳以下の下部組織を持っているクラブがほとんどで、全国リーグが発展しているイタリアのような国もあります。UEFA Youth League や The NextGen Series のような大会もあり、ヨーロッパでは20歳以下(あるいは18歳以下)の選手たちが活躍する大会が数多く用意されている。
日本でも高体連チーム(いわゆる部活)とユースチームが戦うプレミアリーグやプリンスリーグのような大会もありますが、これはどうしても高校生が参加する大会になってしまう。プロ入りして間もない選手たちがプレーする環境というのは、2009年にサテライトリーグが廃止されたこともあって、今は非常に限られてしまっている。そうであれば、現在のU-18の組織の上に20歳前後の選手たちがプレーできる下地を用意してやる方がいいと思うんですよね。
19〜20歳の選手で1チーム組めるような人数を抱えると、今度はそれがクラブの負担増になってしまいかねないので、まずはU-18組織の対象範囲を広げるようなやり方でもいいのではないかと考えます。大卒も含め、各クラブが抱えている1〜2年目の選手にユースの選手が混ざってチームを作り、リーグ戦を行う。例えばJリーグの前座試合でそのチーム同士が戦うようなことがあってもいいと思います。こうすることでコストアップが抑えられ、若手にもプレー機会を与えることができるのではないでしょうか。
リーグ戦が始まってしまう以上、U-22選抜の動向は見守るしかないのですが、若手の成長の場をリーグ側が提供するのであれば、もっと別のやり方もあったはずなんですよね。どうも考え抜かれた制度に感じられないというか、ここ数年のJリーグは施策の大きな“穴”を認識しないまま進めてしまっているところが多い。
このU-22選抜の参加というのを契機に、リーグがいかに振る舞うかというのを今一度見つめ直して欲しいと思います。