Jリーグのスタジアムに必要な“規模感”とは?
2016/06/14
フットボールチャンネルでスタジアムに関する記事があったので紹介しようと思います。イタリア人記者が選ぶ日本のサッカースタジアム20選という視点です。
スタジアムの評価基準としての“規模感”
フットボールチャンネルに寄稿しているチェーザレ・ポレンギ氏はこういう風にスタジアムを評価しているのか、というのが分かって面白かったのですが、それ以上の気付きだったのが日本には意外とサッカースタジアムがあること。このランキングで言うと等々力陸上競技場は例外ですが、「サッカースタジアム」と呼べる場所がこれだけあるというのは寡聞にして驚きでした。
ポレンギ氏の評価基準というのは非常に明確でいいですね。スタジアムの景観、周囲の雰囲気も合わせたアクセスの良さ、そして規模感。まとめるとこうしたところを総合的に評価されていると思いますが、規模感って結構大事なんですよね。それは使用するクラブの動員力とか都市の人口などにも左右されるところですが、規模感も合わせてスタジアムを評価しているところも見えて、そこに非常に共感します。
日本のスタジアムは箱物に言われることが多いですが、これはスタジアムの使用目的や規模感を考慮せず建設しているから起こるんですよね。日本でよく見られる陸上トラックの付いたスタジアムというのは、最初から球技と兼用で作られていることが多い。行政の予算などの兼ね合いもあるでしょうが、何のスポーツを行うかというのが明確でなく、結果として観客席からグラウンドが見づらい設計のところも多いと思います。
そして規模感。前述の目的というところと合わせて、規模についてもその立地で最大限動員できる観客席を、なんて考えるから大き過ぎな箱ができてしまう。それをJリーグクラブが使用すると、動員力に見合わずそれなりの人数が入ってもガラガラに見えるどころか、自治体の持ち物だと使用料ばかりが嵩む、なんてことにもつながる訳です。
最たる例は日産スタジアムと味の素スタジアムでしょう。それぞれ7万2000人、5万人を収容できるスタジアムですが、横浜F・マリノスやFC東京がそれなりに人を集めても年間平均の収用率は40〜50%程度になってしまう。今後クラブやJリーグの人気が上がって、今以上の観客動員ができるかもしれませんが、現状で言うと適切な規模で運営できているとは言えないですよね。
適切な規模であれば、スタジアムの経済にも好影響が
比較して、適切な規模のスタジアムなら雰囲気がまるで変わるんですよね。同じ1万5000人でも、5万人の中なのか2万人の中なのかで雰囲気に大きな違いが出てきます。隣に座る人との距離感、感じられる温度感、響く声の大きさ、人が飛び跳ねる振動。こうしたものの伝わりやすさが格段に変わってくるというのを、体感したことのある方も多いのではないかと思います。
密度の問題と言われればそれまでですが、その密度が実は大事だったりする。雰囲気によってもう一度スタジアムに来たいと思える人もいるでしょうし、外から見た時に盛り上がっているように見えればテレビ中継や屋外広告の価値も上昇してくる訳です。規模感というのは競技そのものにも影響しますし、スタジアムに関わる経済活動にも無関係ではないんですよね。
イングランド・プレミアリーグやドイツ・ブンデスリーガのスタジアムが、雰囲気良く見えるのは何故でしょうか? スタジアムのデザインも関係しているでしょうが、サッカー専用スタジアムを適切な規模で運営できているからです。
シーズンチケットもよく売れて彼らの試合はほぼ毎試合満席になっていると言われますが、こうなると一般のチケットはプレミアムにもなってきます。規模が適切だとそのチケットの価値や試合を観た時の経験・体験も貴重になってくるんですよね。イングランドやドイツのサッカー専用スタジアムが大きいのは、それが適切な規模であるからで、大き過ぎるものはつくっていないんですよね。
これからもJリーグでスタジアム建設の動きはありそうですが、つくる際には“規模感”についても議論して欲しいですね。場合によっては今より小さいものを建設することも有り得るでしょうが、箱物でなく考え抜かれたスタジアムが増えることを願っています。