スポーツ

野球・独立リーグが日本スポーツにもたらす価値

2016/06/13

先日スポーツナビで読んだ記事で考えることがありましたので、こちらで紹介します。

 

東大、青学…「一流大学」から独立Lへ― 野球を「諦めない」男たちが見る夢 | スポーツナビ

 

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ベースボール・チャレンジ・リーグ(独立リーグ)の公式サイト。井坂選手は信濃グランセローズに、渡邉選手はアルビレックス新潟に入団する。

 

下部カテゴリーの価値が上がり、日本のスポーツに生まれる選択肢

サッカーではJリーグが創設され、各クラブがユースチームを持ったことから、高校サッカーを経由しないでプロに進む道というのが確立されました。あるいは、専修大からドイツのケルンへ加入した長澤和輝選手のように、Jリーグを経ないで海外でプロになるという選択肢も生まれてきている。

 

それと同じように野球でも、NPB(日本プロ野球)の世界へ進むための選択肢として独立リーグが価値を上げてきているようですね。あるいはプロ野球を経験した選手たちが、キャリアのルートの一つとして独立リーグを選ぶことも増えてきている。これは日本のスポーツにとっていい傾向なのではないかと思うのです。

 

これまでで言うと、プロ野球の世界へ進むためには甲子園や大学リーグ、社会人野球で活躍してスカウトの目にかかるのがほぼ唯一の選択肢でした。あるいは、プロ野球の世界でドロップアウトしてしまうと、その下のカテゴリーに当たるものがなく、オファーがなければ引退という選択肢を取らざるを得ない、というのが当たり前でした。

 

独立リーグの認知度はまだまだ低いですが、少なくとも「高校・大学・社会人野球→プロ野球」というルートから外れた時の選択肢として成り立つほどにはなってきている。独立リーグが発展していけば、日本のプロ野球や学生スポーツを支えるプラットフォームになれると思います。

 

独立リーグはJリーグで言えば、J2やJ3に当たるのではないでしょうか。J2が生まれて既に15年が経過しましたが、日本代表の経歴を持つ選手や、アンダー世代の有望株がJ2クラブを選ぶことも増えてきています。日本代表に選ばれることで言えばJ1が有利ではありますが、下部のカテゴリーに所属することの価値が、選手にとって上がってきている証拠だと言えます。

 

“通常のルート”を諦めなければならなかった者たちを受け入れるプラットフォームに

独立リーグもそうしたプラットフォームになることができる。紹介した記事の井坂肇選手や渡邉雄大選手は、怪我で棒に振った期間があったり、全国大会に出られなかったりと、言わば“スネに傷を持つ”男達なのかもしれません。ですが、これが数年前であれば、その傷を理由にプロを諦めなければならなかったはずなんですよね。

 

怪我が治って感覚が戻れば。そう思われた選手たちが、今まで何人いたか知れません。あるいは、大学まででは芽の出ない大器晩成型もいたかもしれませんね。そうして今まで“通常と思われてきたルート”を諦めなければならなかった者たちの受け皿になれる可能性があります。

 

日本の学生スポーツでは、「全国大会に出なければ価値がない」などと考えられる向きもありますが、これは古い組織が自分たちの大会を盛り上げるために考えた理屈。この理屈では、その学生のカテゴリーで見出せない価値を見落とすことも正当化されてしまいます。本来は、その舞台で活躍できなくてもその上のカテゴリーに進める権利と選択肢があって然るべきなのです。

 

アスリートの価値の判断基準というのはいくつあってもいい。アスリート自身が自分の価値を決めることもできる。本来こうあるべきなのですが、プロ野球では独立リーグの存在や発展が、こうした価値観を認めるための理由になるかもしれません。

 

高校や大学の舞台で活躍できなければ価値がない。こんな考え方をする時代はもう終わりに近いと思います。スポーツに携わる者の多様な価値観を認め、個々人が自分の価値を決める。社会はこんな方向に向かっていると思いますが、スポーツ界でもそういう風になればいいですね。

 

独立リーグが発展していくことで、野球の世界でもそんな考え方が広がっていくことを願っています。

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