大学スポーツの発展からビジネスが循環する
日本のスポーツビジネスの中でも発展の可能性が高い領域として、大学スポーツがあります。2015年にスポーツ庁ができたこともあり、スポーツを成長産業としていくスポーツ未来開拓会議の方針も出てきていますが、その中で大学スポーツも注目を浴びています。
日本の大学スポーツはビジネスのポテンシャルが高い
大学スポーツのビジネスが最も発展しているのはやはりアメリカで、全米大学体育協会(NCAA)は年間1000億円もの収益を上げています。アメリカンフットボールなど最も収益性の高い競技では、世界のプロリーグに引けを取らないだけのビジネス規模になっているものもあるほどです。
日本版NCAAとも言うべき統括機関を設置する、という政府与党の動きもあるようですし、日本の大学スポーツにも競技としてレベルの高いコンテンツは数多く存在します。例えば正月の箱根駅伝をはじめとする陸上長距離レース、六大学や東都の野球リーグ、サッカーの総理大臣杯など。あるいは種目に関わらず早慶戦というのも一つのコンテンツと言えるでしょう。
箱根駅伝は高視聴率を叩き出しますし、六大学リーグも人気と伝統があります。大学は実業団やプロへの人材輩出元としても機能しているところがあり、その点でも注目が高い。人気があってレベルも高いこうした競技や大会には、ビジネスの大きなポテンシャルが眠っている訳です。統括してマーケティングすることができれば大きな収益を上げることも可能だと思っています。
大学でのスポーツ人材育成からビジネスの好循環が始まる
大学スポーツビジネスが発展することのメリットは何かと考えると、思い浮かびやすいのは指導者などへの報酬であったり、競技レベルの向上であったりというところでしょう。それ以外にも、大きなメリットが見込めるのが人材育成の面ですね。それも競技者だけでなく、スポーツビジネスの人材を育成していくことができるようになります。
アメリカの大学では体育局という部門がスポーツ活動を仕切っていて、そこにはプロフェッショナルな人材が雇用されている。それだけでなく、大学内でのインターンのような形式で学生がその活動に携わることもできるということです。つまり、大学生のうちからスポーツビジネスの前線を経験していける。
当然、そのスポーツビジネスを経験した大学生というのは、業界にとっては非常に貴重な人材となる訳です。実際に、ビジネスのオペレーションにおいて優秀と評価された学生は、NFLやMLBといったプロスポーツクラブへ就職を決めていく。新卒の年代で既に実績のある人材が、大学スポーツの中で育成される仕組みができているのです。
現在はスポーツを理解してビジネスもできる人材が少ない、と業界では言われているのですが、こうして育った人材がスポーツビジネスの業界に入ってこられるようになると、産業としても底上げが効いてくる。ビジネスがスケールし、ひいては競技面でもレベルアップが図れるようになってくる。高等教育を受けスポーツビジネスを経験した人材を輩出するところから、ビジネスと人材の好循環が始まるということです。
大学スポーツにはメーカーも注目しており、アシックスやアンダーアーマーが乗り込んできている。これからの大学スポーツは、スポーツマーケティングの最前線がある状況が出来上がるかもしれません。そしてこれは、大学スポーツが発展しているアメリカと日本でしかできない仕組み作りでもあるんですよね。
大学スポーツから競技者だけでなくビジネス人材も生まれていく。大学スポーツが発展することによってそんな未来が近付いてきますね。