田中投手やフォルラン選手の移籍に思う、日本スポーツ界の報酬
2016/06/13
ここ数日、プロ野球では田中将大投手のニューヨーク・ヤンキース移籍、Jリーグではディエゴ・フォルラン選手のセレッソ大阪加入が話題ですね。田中投手の獲得資金総額が約180億円だとか、フォルラン選手も6億円で契約したとか、目眩がするような金額が動いたという話が聞こえてきます。
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※注:フォルラン選手の加入については、選手側の発表はされていますが、クラブの公式リリースは出ていません(1月26日時点)。
日本のスポーツ界で、きちんとした報酬を受け取れている人は多くはない
既にヤンキースやセレッソ大阪の今季の布陣を予想する向きもありますが、私がこうした動きを見ていて思うのは、やはり日本のスポーツビジネス規模をもっと大きくすべき、ということですね。それは選手たちが受け取る年俸や契約金の大きさだけではなく、スポーツに関わる人たちが適切な報酬を受け取れるようにしたい、という思いです。
少なからず私もスポーツの世界に関わってきましたが、日本でこの世界に関わる人たちで、きちんとした報酬が受け取れている人々というのは決して多くはないと思っています。
Jリーグクラブの運営会社で働く人のように、会社員として安定した給与体系で生活できているケースもあれば、スポーツライターのように完全実力主義の世界で生きている人もいます。こうした会社の給与水準やライターの平均収入というのは正確に書くことはできないのですが、過去に私が関わってきたところでも、非常に厳しい生活をされている方も少なからずいらっしゃいました。
今がきちんとしていないと言うつもりはありませんが、やった仕事に対して十分な報酬を受け取れている人が少ない、というのは事実。例えばライターの原稿料というのは、非常に安く見積もられていることがよくあります。実力があって書けば書くほど儲かるとはいっても、仕事量には限界がある。そしてライターが取材して記事を書き上げるためには、交通費や宿泊費といった諸経費がかなりかかるものです。それがなければ良質な記事を書くこともできず、スポーツジャーナリズムも発展していかない。
あるいは、選手も同じような立場に置かれていると言ってもいい側面があります。プロ野球やJリーグの選手の中には、1億円を超える年俸で契約している選手もいますが、全体的な金額の水準をもっと上げてもいいのでは、と思っています。
選手たちの立場を考えてみると、彼らは政治家でも芸能人でもないのに、顔や名前を晒してファンやジャーナリズムのプレッシャーの前に立っている訳なんですよね。そして、そもそもが長くはない選手生活の中で、特別な才能を消費しながら生きている。私は今の日本のスポーツ界を見ていて、競技のプロフェッショナルたる選手たちにはもっと敬意が払われ、より十分な報酬を受け取るべきだと常々思っています。
日本のスポーツ界は仕事をする人の善意に甘えている
スポーツの世界のために使命感をもって仕事をする人たちがいます。誰もが持てる訳ではない才能をもって、プロの厳しい世界で日々戦う人たちがいます。こうした人たちが十分な報酬を受け取ることができず、身を削りながら仕事をしている。果たして、今のこの状況は日本のスポーツにとって正しい状況なのでしょうか? 金銭が全てではないにしろ、立派に仕事をしている人たちがもっと報われて欲しい、と筆者は思うのです。
欧州サッカーのトップレベルのリーグや、メジャーリーグで動く金額の大きさについて是非を問う声もあり、これを是正する動きがあるのも確かです。それでも、あれだけのスポーツビジネスの規模があることを確認する度に、羨ましさを覚えるんですよね。少なくとも、選手やその周りで仕事をする人々に敬意が払われていることも感じるのです。
日本のスポーツのよくないところとして、その世界のために働く人たちの善意や好意に甘えてしまっているところがあると思います。これはJリーグとクラブの関係でも同じですね。私はこの状態がいいとは決して思いません。成した仕事に対して、きちんと報酬を受け取れるというのが当たり前のはずで、日本のスポーツ界もそのようになって欲しいですね。