国立競技場から考える、Jリーグのスタジアム論
2016/06/13
昨日のことですが、JリーグのFUJI XEROX SUPER CUP 2014を国立競技場で観戦してきました。今回はその観戦で考えたことを記したいと思います。
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昨日の観戦の目的は、シーズンの幕開けを告げる試合を観ることももちろんですが、今年から改修に入る国立競技場を実際に見納めしてくることも目的の一つでした。上の一枚目は、私が観戦したSA指定席・後段から撮影したものです。iPhoneで撮影したものなので画質はイマイチですが、実際に見た感覚ではかなり見やすい席でした。
あとの2枚が、表彰式も終わってスタジアム内を回り、撮ってきたものです。指定席の最前列や、自由席のゲート近くから撮っているのですが、デジカメのような広角で撮ってもかなり見やすい構造であるのが分かると思います。
こうして陸上競技用のトラックが設置されているスタジアムだと、必然グラウンドと座席の距離が空いてしまい、観戦の障害になるという意見は以前から言われていることですが、そこは流石に国立競技場。1964年の東京オリンピックに向けて建設された競技場で、よく設計されたものだなと。もちろんサッカー専用スタジアムとは比べるべくもないですが、本当に見やすい構造だと思います。
建設当時はサッカーなどの競技に人気があった訳でもなく、グラウンドで行われる競技を行う際の見やすさなどを考慮するのは難しかったのではないかと推測できます。それでもこうして優れた構造になっているのは、当時の技術や設計の粋を集めた賜物ですね。建設から50年の歴史を感じるとともに、当時の情熱に感心するばかりです。
やはりサッカーは専用スタジアムで観たい
とはいえ、こうした陸上競技と兼用のスタジアムで観戦する度に思うのが、やはりサッカーはサッカー専用スタジアムで観たいな、ということです。埼玉スタジアム2002や日本平、球技専用の三ツ沢公園球技場で試合を観ると、やはり迫力が違うんですよね。選手同士が掛け合う声が聞こえますし、テレビでは映し切れないプレーの細やかな点などは、やはりサッカー専用でこそ感じられるものです。
上記は観る側の視点ですが、サッカー(球技)専用はグラウンドが近くなる分、観客席から伝わるエネルギーも大きくなる。それを表しているのが日本代表で、親善試合は各地で行っていますが公式戦のホームゲームはほぼ必ず埼玉スタジアム2002で行われています。収益を考えれば日産スタジアムの方がよさそうなところですが、そうではなく埼玉を選んでいるというのが象徴的ですね。
今のスタジアム事情を考えると、日本の場合は各クラブではなく、自治体が所有しているケースがほぼ全てです。そうなると、自治体としては市民の再利用性やコンサートなどスポーツ以外のイベントでの活用を考えると、どうしても陸上競技兼用になりやすい。兼用の方がキャパシティも大きくなりやすいという事情もあります。
スタジアムがスポーツを育てる側面もある それぞれの競技に適したスタジアムを
Jリーグクラブはスタジアムを所有できる余裕はなく、どうしても自治体のスタジアムを利用せざるを得ない。あるいは、自治体の協力を得てスタジアムを改修するということになる。これがサッカーや球技専用であればいいですが、多くはそうではない。Jリーグクラブがメインで利用するということが考えられたものではない、ということが言えます。実際にJリーグ開幕以前に建設されたスタジアムも多い。
こうなってしまうと、クラブはスタジアムを使ったビジネスやマーケティングというのが非常にしにくいんですよね。例えばスタジアム内にグッズショップを構える、レストランを開く、といったことができない。ホームゲームの度に屋台通りを作り、小さなイベントを行っていく、というような利用方法しかできないのです。これでは地域への還元も大きくはならない。
スタジアムを使ってのビジネスやマーケティングについては以前から言っていることですが、それ以外にも、スタジアムの雰囲気を感じた人が、またその雰囲気を味わいたいとリピーターになるということもある。その雰囲気を生み出せるのはやはり、その競技に最適化されたスタジアムだと思うんですよね。Jリーグがこれからのビジネスを考えるなら、こうした“場の雰囲気”も頭の片隅に置いておく必要があります。
日本のこれまでのスタジアムというのは、自治体としての利用やビッグイベントでの活用というのが優先されていたと思います。しかし、考え方を変えれば、スタジアムがスポーツを育てるという側面もある。様々なスポーツを一緒くたに扱うのではなく、それぞれに適したベニューというのを用意していく必要があると、筆者は思います。
それは東京オリンピックに向けても、日本のスポーツ文化発展に向けても。新しい国立競技場にも期待しつつ、日本に新たな形のスタジアムが増えてくれることを願います。