日本スポーツは人材輩出にも目を向けないといけない
前回のエントリーは「日本のスタジアムへの考えは10年以上遅れている」というテーマですが、それ以外の側面でも深刻な後れを取っていると思わざるを得ないところが目立ってきています。その一つが人材輩出という点です。
発表が今年の5月、日本でニュースになったのも少し前ですが、シラキュース大学がアメリカで初めて、スポーツ分析学の学科を開設するということです。公式発表のほか、Forbesも記事にしています。
大学の学問になる=社会でスポーツ分析の人材が求められている
大学というのは高等教育を受けた人材を社会へ輩出していく基盤となる場所ですから、大学の学問となるということはつまり、社会でその人材が求められているということです。経済、経営、理工、医学と、どれをとっても社会に不可欠だからこそ定番の学部・学科というところが存在する。
シラキュース大学で学科が開設されたのも、スポーツ分析学に長けた人材が社会で必要になってきているということ。アメリカのスポーツ産業の中でアナリストが重要な存在になってきていることの示唆でしょう。
競技中のデータ取得と活用というのは既に当たり前になっていて、バレーボールのアナリストのように注目を受けることもしばしばあります。アメリカが先を行っていると思うのは、そのデータをファンに提供するところまで構想が進んでいることですね。スタジアムのデジタル化にもつながる部分ですが、競技を観て楽しむための要素としてデータを利用するところに話が及んでいます。
そのデータ利用をするのがスポーツアナリストにほかならない。そしてスポーツアナリストの輩出がアメリカ社会でも必要になってきている。そんなことをシラキュース大学が示しています。
この学科のさらに特徴的な部分として、外国語習得にも力を入れるところが挙げられます。Forbesのインタビューを読んでも「外国語スキルと分析学を結び付けることによって、学生がよりマーケティングに長けるようになる」とあります。世界のマーケットに人材を提供しようというビジョンまで伺えますね。
このままでは日本スポーツが世界から取り残される
アメリカは先進的というか、進むべき道を進んでいるなあという印象です。おそらく、シラキュース大学以外にもこの学問で追随する教育機関も出てくるでしょう。日本でも2020年へ向けてスポーツ庁ができたりと、近年ようやくスポーツ産業を盛り上げようとする動きも出てきましたが、動きとしてはちょっと遅いですね。
日本では様々な産業が“ガラパゴス”と言われますが、スポーツ分野も例外ではありません。最先端のアメリカが世界へ人材や技術を提供しようとしているところでガラパゴスなままでは、日本はただ世界から取り残されていくだけです。
早稲田大学にもスポーツ科学部があったりと、日本の大学でもスポーツに関する学部はありますが、スポーツ医科学やトレーナー養成など、日本でも従来から要望のあった学問を体系化した、という側面が強いと思っています。
ここからもっと踏み込んだ発想と動きをしていかないといけないということです。2020年へ向けてスポーツ産業は活発になっていくとは思いますが、産業を支える人材輩出の部分にも目を向けないといけない。そうでないと日本スポーツの発展は望めないと思います。